ダブルループ学習

澤木 宏文

以前、ご挨拶の中で「学ぶ」ということに触れました。大人、とくにシニア世代の学びということで話をしてみたいと思います。

先日、ラジオで教育の話題があり、そこからダブルループ学習というキーワードを思い出しました。
アメリカの組織心理学者が提唱した『組織学習』における考え方で、問題解決の際、既存の知識や経験による解決策(シングルループ)ではなく、これまでの目的や前提そのものを疑い、軌道修正を行ない、問題を解決していく(セカンドループ)方法です。この2重ループのサイクルを繰り返し継続できる組織だけが競争優位を保ち続けられる、というものです。

過去の知識や経験だけによる問題解決は、シングル・ループ学習といいます。
単純な問題解決だけで済む場合は、大きな差にはならないかもしれませんが、現代の社会では、複雑・多様な問題に対応できなければ、勝ち残っていくことはできないということです。
このワードを考えるとき、いつも思うことは、個人についても全く同じことがあてはまるということです。

若い頃であれば、教えられたことだけでなく、そこからモノの見方・考え方をどれだけ広げるかが学ぶ力の差となり、社会人になってからの活躍に大きく関わってきます。
暗記が得意でテストの成績だけがよい人よりも、自分でしっかりと考え行動できる人のほうが安心して仕事を任せられると、マネジメントや若い人と仕事をした人であれば誰でもわかっていることでしょう。

社会人経験の長い人であれば、これまでの知識・経験だけで、多くの問題解決を行なうことができるはずです。それだけでも解決策が得られる場合も多く、ある分野のベテランであればあるほど、それで大丈夫と思いがちです。(シングルループ学習)
しかし、その成功体験に陥ってしまうと、世の中の変化に対応できなくなってしまいます。自分ではこれで大丈夫と思っていても、周りには理解されずらくなっていると感じたら、ダブルループで考えているかと振り返ってみたらいかがでしょうか。
これまでの知識・経験に加え、常に新しい知識・情報を取り込みながら、客観的に物事を考えたり、問題の解決策を探っていくといったダブルループ学習を行うことができないと、どうしても社会の流れから置いてけぼりにされてしまいます。

シニア世代ともなると、様々な分岐点・意思決定の場面に遭遇することになります。ダブルループ学習はそのようなときに、大いに役立つはずです。

そのために必要なものは、新しい知識・情報を学び続けること、問題意識・クリティカルなマインドを持つこと、論理思考・問題解決技術などのスキルを身につけることです。
人生100年時代、定年を過ぎても長い時間が残されます。健康とともに、ぜひこのダブルループ学習で、いつまでの活躍できる人生を送りたいものです。

「モゥーひと頑張り」[モデル:古性のっち]