シニア世代の再出発 ~迷わないための新・ライフデザイン~(3)

“やってはいけないこと”は、意外と定年前から始まっている**

 定年が近づいてくると、多くの方が「まずは一息つこうかな」「仕事を離れたらゆっくり考えればいいか」と思いがちです。
 そして定年当日、長年の仕事の疲れがふっとほどけて、急に時間が空いてしまう──。
 この“いきなりの自由時間”が、実は落とし穴になることがあります。
 今回は、「定年後にやってはいけないこと」を中心に、「実は定年前から気をつけておきたいポイント」も合わせてお伝えします。


■ 1. 「しばらく何もしない」を無期限で続けてしまう

 定年直後、心身の疲れを癒すためにしばし休むのは大切な時間です。
 しかし、ここが罠になりやすい。人の行動は「慣れ」に左右されます。1週間の休みが2週間になり、気づけば1か月、3か月……。
 その間に生活リズムが崩れ、気力も落ちてしまう方は少なくありません。

● 定年前からの備え

 「定年後の最初の1か月だけ休む」「午前中は散歩をする」「週1日は誰かと会う」など、“軽い予定”だけでも決めておくと、生活が大きく乱れません。


■ 2. 会社員時代の肩書にしがみついてしまう

 長年働いてきた役職や立場は、努力の証そのものです。
 しかし、退職後もそれを基準に相手を見たり、自分を縛ったりしてしまうと、新しい場でうまくいきません。
 たとえば、地域のボランティアで役職を求めすぎたり、仕事での経験をそのまま持ち込んで周囲と温度差が生まれたり……。

● 定年前からの意識

 「役職の自分」とは別に、“ただの自分”で人と関わる経験を増やすことが大切です。
 趣味の集まりでも、近所の行事でもかまいません。職場以外の人間関係を少しずつ作っていくことで、肩書から自然と離れていけます。


■ 3. お金の心配を「なんとなく」で放置する

 定年後の生活費は、現役時代に比べて入りと出が大きく変わります。
 ところが多くの方は、細かな計算をしないまま退職を迎え、後で不安に押しつぶされてしまいます。
 「年金だけで足りるのか?」
 「医療費はどのくらいかかるのか?」
 「働きたいのか、働く必要があるのか?」
 ここを曖昧にしたまま動くと、選択がすべて後手になってしまいます。

● 定年前からできること

 大げさな資産計画はいりません。
 まずは
・毎月いくら使っているか
・退職後の収入がどう変わるか

 この2つを把握しておくだけで、選ぶ道がぐっと整理されます。


■ 4. 一人で抱え込み、誰にも相談しない

 定年後は、意外なほど「相談できる相手が減る」時期です。仕事仲間とも距離が生まれ、家族も忙しい。
 結果、
 「この歳で今さら聞けない」
 「迷っている自分が情けない」
 と抱え込んでしまう人が少なくありません。しかし、孤立はもっとも避けたい落とし穴のひとつです。

● 定年前からの準備

 シンプルでいいので、「気軽に話せる相手リスト」を作っておきましょう。家族、昔の友人、趣味の仲間──誰でも構いません。
 1人より2人。2人より3人。相談相手がいるだけで、迷いは半分になります。


■ 5. 「定年後はこうあるべき」に縛られる

 「旅行三昧で過ごすべき」
 「毎日忙しく過ごさなきゃダメ」
 「第二の仕事で成功しなければ」
 世の中にはいろいろな“理想像”が語られています。でも、ここに合わせようとすると、かえって苦しくなってしまうことがあります。

● 定年前からの考え方

 大切なのは、誰かの正解ではなく、「自分がどうありたいか」をゆっくり言葉にしていくこと。
 「毎日を心地よく」でもいいし、「軽く働きたい」でも、「学びたい」でもいい。定年前から意識しておくと、選択の軸がブレません。


■ 6. 定年後に“急に”変わろうとしない

 定年は人生の大きな節目ですが、人格や生活をガラリと変える必要はありません。
 むしろ、急激な変化は心身の負担になることもあります。
 「健康のために毎日10km歩こう」
 「今までの自分と真逆の生活をしよう」
 こうした“急ブレーキ&急アクセル”は長続きしません。

● 定年前からの心構え

 変化は“ゆるやかに”。小さく始める、少しずつ増やすこれが長く続くコツです。