「デーサービス・ドライバー日記」(3)

下村 義邦

運転研修

 最初の2週間は、研修期間で道を覚えることが大変だった。
 ナビは、視点を奪われるとのことから使わない。私の場合、土地勘が無かったので大変だった。

・大きめのワンボックス運転

 先ずは慣れる事。ワイドタイプは車幅もあり、ロングタイプは外輪差、内輪差が大きく小回りが利かない。住宅密集地の細い道路を運転するのは、非常に疲れるし通行人や自転車が思わぬ行動に出る場合があり、非常に怖い。
 運転は、枯れた運転を心がける。とにかく法定速度を厳守し、ゆっくり発信、ゆっくりブレーキを踏む。
 私は大型免許も取得しており、運転には少々自信があったが、枯れた運転を身に付けるまで時間が掛かった。利用者を怖がらせては絶対にダメで、常にスローな運転が求められる。
 周りの車は、特殊車両であることを気付きながら、遅い車を避けようと譲ることをしてくれない。ほんのちょっとした気遣いが出来ないドライバーで溢れていることを痛感した。今では、特殊車両に出くわすと必ず譲っている。

・タウンエースとキャラバン

 車イス・リフトの付いた特殊車両は、トヨタが先行し装備品の特許を押さえているため、日産キャラバンは扱いづらい。仕様が違うためリフト操作方法が違う。
 よくある話だが、ドライバーにとっては、仕様は共通にしてほしいものである。
 乗りやすいのはタウンエース。小回りも効くし、運転がしやすい。

・道を覚える

 頭の中に地図を描き、主要な幹線道路を先ず覚えることが重要だ。
始めの2週間は、地図を見ながら、どの道がどちらに向かい、どこで交差しているかを確認するのに時間を要した。ナビに慣れてしまい地図を頭の中に描くのに時間を要した。また利用者さんの家を覚えるのに、道路上の目印を一つづつ覚えなきゃいけない。例えば○○通り●●交差点を左折し、カーブミラーを目印に2本目を左折し、3件目のお宅など、自分で簡易地図を作成し手帳に書き移していく作業を続け、何とか道を覚えていった。

・団地の法則

 私の担当した地域は、ベットタウンで都営やURの団地が非常に多かった。
 公団の大型団地では、区画がイロハニホト(へはさすがに憚れて抜けている)と群れがあり、それぞれイ-8号棟-302号室と表示されている。
 イの群れは、東側に位置し順番にイロハと区画されている。中央に道路があり南側に同じように東からニホトと並んで区画されている。団地内は縦横に道路があり、皆同じように見えるため何処から入れば良いか戸惑ってしまう。
 白いフェンスや、公園、子供用の遊具、電話ボックスなどを目印に覚えていった。
 そういえば、小さな公園ながら雄大な名前の付いた公園があった。その名も宇宙公園(それらしいモニュメントも何もない)。
 団地の1棟には、だいたい6つ位の出入り口があり、東側から部屋番号の末尾で12が1番目、34が2番目、56が3番目というふうに並んでいる。

・道路工事

 私がドライバーを始めたのが11月下旬で、道路工事が非常に多くなり時期にぶつかり、一度覚えたコースを止められ、裏から回ることも多かった。
 道をまだ覚えきれていない私には、道路工事が非常に恨めしかった。
 試走といって、昼間の業務の合間に教えてもらった道をたどるように何度も走ったが、可能な限り裏道を探しておくことも大切なことで、本来の逆から入って行くと風景は一変し、迷ってしまう。
 住宅街は一方通行も非常に多い。一方通行を工事で止められると、どうにもできない。近くまで行って車を停め、利用者さんには添乗者が付いて歩いて来てもらうこともあった。

・道路は予想以上に凸凹

 高齢者を乗せているので、スピードは絶対に出さないが、ゆっくり走っても道路のデコボコで揺れてしまう。普通乗用車とは違い、サスペンションが固い分、非常によく揺れる。マンホールのフタがある所は要注意で、車が跳ね上がってしまう。
 轍も多い。車イスに乗っている利用者さんは、ズリ落ちてしまわないか心配しながら、極スローで走る必要がある。ちょっとした段差も危険だ。とくにマンション入り口の段差などは、注意が必要だ。
 急こう配の坂道もマンション入り口には多い。あるお客さんは、ジェットコースターの道と嫌がり、そこを通るなら私は乗らない。ここで待っているから下ろしてくれとおっしゃる方もいらっしゃり、高齢者にはちょっとした道の変化が恐怖に感じることがあるようだ。