「デーサービス・ドライバー日記」(9)
永く働くための武器は「コミュニケーション能力」
利用者男性陣の多くは、サラリーマン上りのオジサンたちである。
会社と言う狭い範囲の中で培われたコミュニケーション方法は、なかなか変えられない。センターにおいてもサラリーマン上りのオジサンたちは、どうしても会社という環境の中で続けてきたコミュニケーション方法が抜けず、あまりお婆ちゃんたちの中に入り込めていない。
ややもすると、新聞片手に難しい顔をして、一人過ごすか、特定の方とのみ接して麻雀だけを楽しみにしている方も多い。
会社の肩書をもって、どこか上から目線で接してしまい、女性陣からはそっけなくあしらわれてしまう。そもそも会話が成り立たないのである。
今回は働く仲間のドライバーの話をしょう。
◆長老片岡さん
だいたい定年後、数年間を経てドライバーの仕事に付かれている方が多く、我がセンターには76歳の片岡さんが最年長で、みんなから長老と呼ばれ元気に働いていらっしゃる。
もともと車メーカー系のお仕事をされていた方で、車を丁寧に扱われ、毎朝車を大事に拭いておられる。センター内の仕事も手を抜かず、いつも何か手を動かしている。片岡さんが居ることで、まだまだ若い我々は手を抜けない。
ダジャレの名人で、反応が素早くシャープな頭からポンポンと面白い言葉が出てくる。センター内のヘルパーさん達にも人気でコミュニケーション能力が非常に高い。見習いたい人物である。
75歳で最後と言われていたが、ドライバー派遣の会社側は、体も丈夫でヤル気のある片岡さんを雇用し続けている。派遣企業としては、75歳までの雇用を規程しているものの、柔軟に対応しているようだ。
私もいつまで働けるか解らないが、片岡さん目指して頑張ろう。
◆リーダーの吾妻さん
吾妻さんは、センター発足以来のドライバーで経験豊かな方です。
ドライバーの多くは、車好きや車を運転する仕事からの転身も多いが、この方は、なんと飛行機の操縦免許をお持ちのドライバーである。
もともと飛行機屋さんで、飛行船を飛ばす仕事を経営していたこともある方で、サラリーマン上りとは違う。上り下りの多い経営で苦労もされた様子だが、どっこい人生をおおいに楽しんでいらっしゃる。
コミュニケーション能力は片岡さんとは、また違ったタイプで愉快なエンターティナーである。カラオケの司会進行はバツグンで、利用者の方々を乗せるのが上手で、手が空くと利用者と一緒にお話をされている。
下ちゃん下ちゃんと可愛がっていただいた。終了間際には、私の行く末を心配され経営の在り方や、心構えなどを教えていただいた。
運転は慎重で本当に枯れた運転を心がけているが、73歳まだ先を見据え次の仕事を始めることを考えていらっしゃる。見習いたい先輩である。
◆紅一点の江藤さん
江藤さんは、ドライバーの中の紅一点で、女性らしい細やかな視点を持った方で、掃除、洗い物、レクの手伝いなど一生懸命やっておられた。
センターでは、洗い物を必ず消毒液に漬けている。この消毒液が曲者で、実に恐ろしい毒液である。私は1週間で手が荒れ、親指の先がひび割れ痛い目にあい、以来ゴム手袋は欠かせなかったが、彼女は平気でいつも素手でやってなんともないそうで、鉄の手を持つセンターのサッチャーだった。
大型の車が苦手で、3度自損事故をしてしまい運転禁止の憂き目にあいながら持ち前の明るさを失わずにクビを免れ、ほかの事業所へ異動して頑張っている。温情あるなかなか良い会社でもあるのですが、女性特有のきめ細かいコミュニケーションスタイルを良しとした結果であったと思います。
★コミュニケーション能力は、どこでも役に立つ最強のスキル
長くサラリーマン生活を過ごすと、悪い癖がついてしまう。
貴方が65歳以降も働き続ける心づもりがあるなら、一番重要なスキルはコミュニケーション能力である。
どこへ行っても通用するコミュニケーション方法を身に付ける必要がありそうだ。そのためには、社外の方々と大いに付き合うことをお勧めする。
何かしらのコミュニティに早めに参画して、利害の無い輪の中に自分を置いてみることが必要だ。
SNSを始めてみるのも良い。学生時代の仲間たちと久しぶりにネットを通じて旧交を温める機会を得ることも出来るだろう。
趣味・思考の仲間に出会えるチャンスも広がるかも知れない。
今いる狭い関係を飛び出してみてはどうか。
ご同輩の皆さん、何から始めますか。いつ始めますか。今でしょ。
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