「デーサービス・ドライバー日記」(6)

デーサービスのお客様たち⓷

 デーサービスのお客様たちの第三弾。
 いろいろやってくれます。

◆おもらしサッちゃん

  サッちゃんは、デーが大好きで、お風呂や食事を楽しみにいらっしゃる。
 ただ、迎えに行くと阻喪をしてしまうことが多い。出掛ける際に、トイレに行かれなかったのか、我慢が効かない様子。だからサッちゃんの座席には、添乗さんがタオルが敷いている。
 「今日はご飯が美味しかったわね。今日は楽しかったね。お父さんご飯食べたか な?」と毎度同じことを繰り返される。ボケてもご主人を大切にされ、心配しているのだ。聞いてみると食事は全てご主人が用意しているようで、めんどくさくなるとカレーになるそうだ。「私はカレーも好きだから良いのよ」と言いながら、「今日はデーでもカレーだったから、カレーは嫌ね。」
 年を取ると阻喪は付きものであるが、小はともかく、大は匂いが大変である。
 車の中に匂いが充満してくると、たまらないが、同乗する皆さんは平気な様子。
 なぜか添乗さんに聞いてみると、痴ほうの方は多くの方が、嗅覚も弱ってしまい匂いを感じない方が多いとの事。なるほど、そういう事かと合点がいった。      

◆クレーム婆さん

 むかし化粧品会社で長く勤めあげ、フランス本社へも行ったとお話される加藤さん。デーにいらっしゃった当初は、車の中で大騒ぎ、「私の家はすぐそこよ。なぜ私の所を素通りしていくの?早く下ろしてちょうだい。」
 送迎には時間と順番が決まっており、何度も近くを通過しても順番通りに運行する決まりである。こちらも可能な限り、同じルートを通らずに利用者さんの家にお届けするようにしているが、近くのスーパーなどを見つけると歩いて帰るから下ろしてと言い出す。そして、「責任者に言っておきます。サービス業であるなら顧客の希望を受入れなさい。私は明日からデーには行きません。」
 ビジネスウーマンとして定年まで勤めあげた方は、どこか男性化しているのかクレームも上から目線である。しかし、翌日には、ケロッと忘れてまた、同じことを繰り返すのである。さすがに同乗の方々に迷惑となるので、帰りは1番に下ろすように変更した。

◆交通事故にあった婆ちゃん

 要支援の田中さん。交通事故で1ヶ月ほど休んでしまった。
 復活して聞いてみると、自転車で買い物に出かけバスに接触したらしい。
 立派なマンションに一人で暮らす独居老人で、買い物に自転車で行く途中の出来事だったらしい。右腕を骨折しているとのことであったが、一見何も解らない 程、普通にしている。痛みは無いのか聞いてみると、痛みさえも忘れてしまうらしく、時々右手で荷物を持った時に痛みを思い出すそうな。
 痴ほうとは、時に痛覚さえも忘れさせるのかと感心したものだ。

◆資産家の山崎さん

 センター近くのマンションのオーナー山崎さん。
 いつも大きなバックを肩に担いでいらっしゃる。噂では権利関係の書類や印鑑を持ち歩いているのではないかとモッパラ。
 将棋の迷人で、王将を握りしめて打つ。打ち手は早く、駒の進め方もルールもしっかり覚えているが、王将が手の中にある限り、王手は不可能。すごい迷人である。
 放浪癖があり、外出してしまうので、時々行方不明で家族から連絡が来ることがある。
 センター内でも動き始めると皆、目を光らせている。バックにはきっと、GPSを設定した携帯が入っているに違いない。

★あなたは、自分の住む地域の老人会をご存知ですか

 私たちの仲間には、板橋区の老人会をまとめる事務局長がいます。
 彼の話を聴くと、老人会とは言わずシニアクラブと称しているようだ。団塊の世代が高齢化しシニアクラブに参加される方が増えると期待していたが、さにあらず。
 一向に新規会員は増えないそうだ。何故なら、クラブそのものの存在やどうやって参加するかも解らないからだ。シニアクラブも高年齢化の一途をたどり、平均年齢も非常に高いそうだ。まだまだ若い60代の新加入者が入会することで活性化を狙い、いろいろな企画を検討する中、広報宣伝活動や、何をやっていくか新しい仲間を求めています。
 貴方の好きなことを、シニアクラブに弘め、新たなコミュニティに参加しませんか。
 是非、貴方が住む地方自治体のシニアクラブを検索してみてください。

この項、続きます。